深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

正欲/朝井リョウ〜自分の中の「たった一つの異質」が、自分を孤独にする〜

《内容》 自分が想像できる”多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな――。息子が不登校になった検事・啓喜。初めての恋に気づく女子大生・八重子。ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。ある事故死をきっかけに、それぞれの人生が重…

Carver's dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選〜生きのびるための物語〜

《内容》 村上春樹が心をこめて贈る、12の「パーソナル・ベスト」。レイモンド・カーヴァーの全作品の中から、偏愛する短篇、詩、エッセイを新たに訳し直した「村上版ベスト・セレクション」に、各作品解説、カーヴァー研究家による序文・年譜を付す。 とあ…

嫉妬/事件/アニー・エルノー 〜最大の苦しみと最大の幸せは他者に起因する〜

《内容》 「嫉妬」別れた男が他の女と暮らすと知り、私はそのことしか考えられなくなる。どこに住むどんな女なのか、あらゆる手段を使って狂ったように特定しようとしたが……。盲執に取り憑かれた自己を冷徹に描く。「事件」1963年、中絶が違法だった時代のフ…

大きなハードルと小さなハードル/佐藤泰志〜ままならない己を抱えながら生きていかなければならない苦しみ〜

《内容》 若くして小説家デビューするも、その後は鳴かず飛ばず、鬱屈とした日々を送る慎一。そんな彼のもとに、友人の元妻、裕子が、幼い息子アキラを連れて引っ越してくる。慎一は、自らの無様な姿を、夜ごと終わりのない物語へと綴ってゆく。一方の裕子は…

きみの鳥はうたえる・草の響き/佐藤泰志〜人の気持ちに触れないと言った旗持ちの少年の言葉は本当だ〜

《内容》 郊外の書店で働く「僕」といっしょに住む静雄、そして佐知子の悲しい痛みにみちた夏の終わり…世界に押しつぶされないために真摯に生きる若者たちを描く青春小説の名作。読者の支持によって復活した作家・佐藤泰志の本格的な文壇デビュー作であり、…

スカイ・クロラ/森博嗣〜深淵をのぞく時深淵もまたこちらをのぞいているのだ〜

《内容》 大人になれない僕たちは、空で戦うことしかできないのだ――永遠の生命を持つ子供たち「キルドレ」が戦争を請負う社会。戦闘機乗りのカンナミは、日々指令を受け空へ出勤し、夜は同僚たちと歓楽街へ出かける。生死とは、そして自我とは何かを問う森博…

ケルトを巡る旅 -神話と伝説の地/河合 隼雄〜ままならない自然の力が生き抜く強さの糧となる〜

《内容》 キリスト教以前のヨーロッパに存在したケルト文化。ケルト人は文字を持たず、歴史を書き記すこともなかった。しかしアイルランドやイギリスの文化には、その影響が今なお色濃く残っている。自然と共に生きたケルト人。自然から切り離された現代文明…

彼女が言わなかったすべてのこと/桜庭 一樹〜この社会の集合意識は若い女性は死んでほしいって思ってる?〜

《内容》 小林波間32歳、前日偶然再会した同級生中川くんとは、どうやら別の東京を生きている。NEW桜庭ワールドに魅了される傑作長編! 桜庭さん特有の命名はそのまま、物語が段々と綺麗になっていくなぁ、と思います。もっとドロドロしてキャラが立ってた過…

むらさきのスカートの女/今村夏子〜やべぇ奴をストーキングするやべぇ奴〜

《内容》 近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが、気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で働きだすように誘導し……。 えっ・・・ギャグ小説かなんか? と思うくらいに面白い。ほんとに。…

彼女は頭が悪いから/姫野 カオルコ〜東大ではない人間を馬鹿にしたい欲が起こした卑劣な事件〜

《内容》 横浜市青葉区で三人きょうだいの長女として育ち、県立高校を経て中堅の女子大学に入った美咲と、渋谷区広尾の国家公 務員宿舎で育ち東大に入ったつばさ。偶然に出会って恋に落ちた境遇の違う二人だったが、別の女の子へと気持ち が移ってしまったつ…